
株式取得と事業譲受で、税負担も承継範囲も変わります
株式取得では法人格が維持されるため、未申告VAT、係属中の訴訟、労務債務がそのまま残ります。買主の防御はDD、価格調整、表明保証と補償条項の三つに限られます。
事業譲受は債務を切り離せる一方、VAT7%や不動産の特定事業税3.3%、移転登録費が発生し、許認可・BOI恩典・賃貸借は原則承継されません。実務では「株式取得+クロージング前の不芳資産の切出し」に落ち着くことが多いです。
外資規制:49%だけが答えではありません
外国人事業法の3つのリストが外資参入を制限します。製造業は原則リスト外で100%出資が可能、サービス・卸小売はリスト3が多く、FBL取得、BOI恩典、日タイEPAの枠組みなどの検討が必要です。名義株主で51%を作る方法は刑事リスクであり、ストラクチャーではありません。
適法な選択肢としては、BOI(100%出資・土地保有・ビザ枠が付随)、IEAT工業団地、種類株式による議決権設計、グループ内サービス契約の組合せがあります。どれが使えるかは売上構成で決まり、雛形はありません。
法務DDで実際に読む書類
登記簿と定款の変更履歴、株主名簿、土地権利証と抵当権、主要契約のチェンジオブコントロール条項、雇用契約と就業規則、外国人の労働許可、許認可と環境関連、税務申告と調査記録、係属訴訟、知的財産登録。
日系案件で頻出するのは、賃貸借契約のチェンジオブコントロール条項(クロージング日に工場を明け渡す羽目になる)と、現金帳簿運用による申告差異(追徴と加算税は新株主の負担になる)の二つです。
サインからクロージングまでの実務スケジュール
DDに3〜6週、SPA交渉に2〜4週、前提条件の充足に2〜8週、クロージングは1日。全体で2〜4か月、BOIやFBLの変更を伴うとさらに1〜3か月を見ます。
対価は分割が基本で、税務・労務の偶発債務に備えたホールドバックを12〜24か月置き、税務調査の遡及期間と揃えます。送金は外国為替取引報告(FET)を残し、将来の配当・売却代金の国外送金に備えます。
よくあるご質問
- タイ企業を買収すれば土地も取得できますか。
- 土地は会社名義のままで、株式譲渡では移転しません。ただし外資比率が49%を超えると土地法上の審査対象になり得るため、長期賃借やBOI・IEATへの切替をクロージング前に検討します。
- DDで未申告税が見つかった場合、取引は中止すべきですか。
- 必ずしも中止ではありません。売主による事前修正申告と納付、対価の減額、専用ホールドバックと税務個別補償のいずれかで処理します。重要なのは金額を確定させることです。
- 手続のために何度もタイへ行く必要がありますか。
- 多くは公証済み委任状で対応できます。銀行口座開設など一部は本人出席か領事認証が必要なため、着手時に「本人出席が必要な項目」を一覧でお渡しし、通常は1〜2日の渡航1回に収めます。