
法定補償金の水準と、算定基礎でもめる場所
勤続120日以上で30日分、以降段階的に上がり、20年以上で400日分。算定基礎は最終賃金で、固定手当は含み、変動歩合は原則含みません。営業職の紛争では、この歩合の扱いが争点になります。
1賃金支払期前の予告を欠く場合は、予告手当を別途支払います。就業規則に「即時解雇できる」と書いてあっても、法定の予告義務を下回る定めは無効です。
補償金を要しない6類型と、必要な証拠
119条は、不誠実行為・故意の加害・重過失・書面警告済みの規則違反・正当理由のない3日連続無断欠勤・実刑判決の6類型を定めます。不誠実行為と犯罪を除く4類型は、警告書を先行させた記録が前提です。
敗ける事案の多くは、理由がないのではなく記録がありません。警告書に受領サインがない、就業規則を掲示していない、労働福祉局への届出がない。この三点を整えるには通常2〜4週間で、後から1年争うより安価です。
駐在員・外国人従業員の退職は、在留手続と同時に締める
労働許可の取消、Non-Bビザのキャンセル、90日報告の終了、社会保険の資格喪失を最終出社日と揃えます。順序を誤ると前雇用主が身元保証人のまま残り、オーバーステイの罰金や再入国不許可の責任論に発展します。
本社籍のまま出向する駐在員は、給与の一部が日本払いでもタイ側の雇用関係は成立します。タイ払い分だけを契約書に書くと、解雇補償の算定基礎で必ず争われるため、総額と負担割合を明記した出向契約を併せて整えます。
労働裁判所の流れと、和解ラインの決め方
労働裁判所に訴訟費用はかからず、従業員側の提訴のハードルは低いのが実情です。第1回期日は提訴後おおむね30〜45日で、まず裁判官主宰の和解が行われ、半数以上がここで終わります。
和解調書は確定判決と同じ効力を持つため、席に着く前に上限額を決めておく必要があります。当方では訴状送達から1週間以内に、勝訴見込みと和解レンジ3段階を書面で提示し、本社が一度で意思決定できるようにしています。
よくあるご質問
- 試用期間中の解雇でも補償金は必要ですか。
- タイ法に「試用期間なら免責」という考え方はありません。勤続120日を超えれば補償金義務が生じ、120日未満でも予告手当は必要で、不当解雇の主張は別途成立し得ます。
- 競業避止条項はタイで有効ですか。
- 有効ですが、期間・地域・業務範囲の合理性が審査されます。実務では12か月以内、同種業務かつ実際の営業地域に限定した条項が維持されやすく、代償措置のない全国3年の禁止は縮減されがちです。
- 労働監督官の命令が出ました。従うしかないのでしょうか。
- 不服であれば命令送達から30日以内に労働裁判所へ提訴できます。この30日を徒過すると命令が確定し、そのまま強制執行の対象になります。