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労務・雇用 · 日本語対応

タイの解雇コストは、法定補償金を払い終えた時点ではまだ確定していません

労働者保護法118条の法定補償金と、労働裁判所設置法49条の「不当解雇」賠償は別建ての請求権です。日系企業でよくあるのは、補償金を満額支払って合意書も交わしたのに、49条を根拠に追加で提訴されるケース。着手前に予告手当・未消化有給・積立基金の精算まで含めた解雇コスト表を作り、本社決裁が一度で通る形にしてから動きます。

タイの労働法弁護士と人事担当者が会議室で従業員記録と解雇書類を確認している様子
解雇前の記録確認。勤怠・警告書・評価記録の三点が揃っていない解雇は争われます。

法定補償金の水準と、算定基礎でもめる場所

勤続120日以上で30日分、以降段階的に上がり、20年以上で400日分。算定基礎は最終賃金で、固定手当は含み、変動歩合は原則含みません。営業職の紛争では、この歩合の扱いが争点になります。

1賃金支払期前の予告を欠く場合は、予告手当を別途支払います。就業規則に「即時解雇できる」と書いてあっても、法定の予告義務を下回る定めは無効です。

補償金を要しない6類型と、必要な証拠

119条は、不誠実行為・故意の加害・重過失・書面警告済みの規則違反・正当理由のない3日連続無断欠勤・実刑判決の6類型を定めます。不誠実行為と犯罪を除く4類型は、警告書を先行させた記録が前提です。

敗ける事案の多くは、理由がないのではなく記録がありません。警告書に受領サインがない、就業規則を掲示していない、労働福祉局への届出がない。この三点を整えるには通常2〜4週間で、後から1年争うより安価です。

駐在員・外国人従業員の退職は、在留手続と同時に締める

労働許可の取消、Non-Bビザのキャンセル、90日報告の終了、社会保険の資格喪失を最終出社日と揃えます。順序を誤ると前雇用主が身元保証人のまま残り、オーバーステイの罰金や再入国不許可の責任論に発展します。

本社籍のまま出向する駐在員は、給与の一部が日本払いでもタイ側の雇用関係は成立します。タイ払い分だけを契約書に書くと、解雇補償の算定基礎で必ず争われるため、総額と負担割合を明記した出向契約を併せて整えます。

労働裁判所の流れと、和解ラインの決め方

労働裁判所に訴訟費用はかからず、従業員側の提訴のハードルは低いのが実情です。第1回期日は提訴後おおむね30〜45日で、まず裁判官主宰の和解が行われ、半数以上がここで終わります。

和解調書は確定判決と同じ効力を持つため、席に着く前に上限額を決めておく必要があります。当方では訴状送達から1週間以内に、勝訴見込みと和解レンジ3段階を書面で提示し、本社が一度で意思決定できるようにしています。

よくあるご質問

試用期間中の解雇でも補償金は必要ですか。
タイ法に「試用期間なら免責」という考え方はありません。勤続120日を超えれば補償金義務が生じ、120日未満でも予告手当は必要で、不当解雇の主張は別途成立し得ます。
競業避止条項はタイで有効ですか。
有効ですが、期間・地域・業務範囲の合理性が審査されます。実務では12か月以内、同種業務かつ実際の営業地域に限定した条項が維持されやすく、代償措置のない全国3年の禁止は縮減されがちです。
労働監督官の命令が出ました。従うしかないのでしょうか。
不服であれば命令送達から30日以内に労働裁判所へ提訴できます。この30日を徒過すると命令が確定し、そのまま強制執行の対象になります。

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