
着手前に確認する時効と証憑
売掛金の消滅時効は原則2年、貸金は10年、手形債権は1年です。催告書の送付だけでは時効は中断せず、提訴、債務承認、一部弁済のいずれかが必要です。
契約書、受領書、残高確認、税務インボイスの四点が符合していれば事件は安定します。日系企業でよくある欠落は、チャットでの口頭変更、受領サインの不備、個人口座での入出金による当事者不明確です。
小切手不渡りには刑事ルートが残っています
資金不足を知りながら振り出した場合、小切手法違反として1年以下の拘禁刑または罰金の対象になり得ます。刑事の圧力が期日前の和解につながることは多いものの、不渡りを知った日から3か月以内の告訴が必要です。
刑事は民事の代替にはなりません。実務では刑事で圧力をかけつつ民事で執行名義を取り、同じ交渉のテーブルで一括解決します。
仮差押えが認められる場面
財産の移転・隠匿の具体的兆候(急な土地名義変更、会社の抹消、事業所の移転)を疎明し、通常は担保を積みます。「逃げそうだから」という一般論では認められません。
疎明資料は土地局の移転記録、商務省の株主変更、公告情報などから集めます。調査段階でこれらを保全しておくと、必要な瞬間に即申立てできます。
執行の現実的なスケジュール
判決確定後、不動産の差押えに1〜3か月、評価と競売公告に3〜6か月、初回不成立での再競売も一般的です。提訴から入金までは18〜30か月を見込むのが現実的です。
資産が枯渇している場合は破産申立(個人100万バーツ、法人200万バーツ以上)を検討し、管財人を通じて過去の否認対象行為を追及します。時間はかかりますが、移転された資産の取戻しが可能です。
よくあるご質問
- 契約書がなく、チャットと送金記録しかありません。提訴できますか。
- 可能です。売買には書面が要求されません。ただし2,000バーツを超える貸金は書面の証拠がないと訴求できない点に注意が必要です。
- 相手がタイ法人です。株主や取締役に直接請求できますか。
- 原則できません。例外は、取締役が個人連帯保証をしている場合、詐害行為や出資の払戻しがある場合、清算手続を経ずに抹消された場合の清算人責任などです。
- 日本で得た判決をタイでそのまま執行できますか。
- できません。タイは外国判決の自動執行を認めておらず、判決を証拠としてタイで改めて提訴します。仲裁合意があればニューヨーク条約に基づく承認執行が可能で、こちらが大幅に早いです。