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建設・工事紛争 · 日本語対応

クレームの勝敗は現場記録で決まり、最後の内容証明では決まりません

タイの元請・下請紛争の大半は、工期遅延の負担を誰が負うかという一点に収束します。工期延伸と費用が認められるかは、契約所定の日数内に通知を出したか、同時期記録があるか、クリティカルパスへの影響を示せるかで決まります。竣工後に資料を作り直しても、仲裁廷はまず採用しません。着手時にまず、いま間に合う通知期限を洗い出します。

建設案件担当の弁護士が現場事務所で所長と施工日報および変更指示書を確認している様子
施工日報、気象記録、議事録。クレームの証拠は着工初日から積み上がります。

遅延クレーム:通知期限と同時期記録という関門

FIDIC系を含む多くの契約は、事象を知った時から一定日数内の通知を求め、徒過するとクレーム権が失権すると定めます。タイ法上この種の条項は一般に有効ですが、発注者が事象を認識し不利益を受けていない場合、効果が緩和されることもあります。いずれにせよ、まず通知を出すのが最も安価な選択です。

証拠の中心は同時期記録です。日々の施工日報、気象記録、人員・機械・資材の搬出入記録、議事録、往復文書。クリティカルパスへの影響を論証するには、検証可能なベースライン工程表が必要です。基準工程表がない現場では遅延分析自体が成立しません。

変更指示と「口頭の依頼」

現場で最も多い落とし穴は、発注者の口頭依頼で追加工事を先行させ、後から精算できないという事態です。契約は通常、変更は書面指示によると定めます。救済は、着手前に書面の確認レターを送ること。変更である旨、概算費用と工程影響を示し、期限内の異議を求め、送達記録を残します。

書面指示が一切ない場合でも、タイ民商法典の不当利得や事務管理の規定で一部請求を支えられることがありますが、立証は難しく認容額も減ります。確認レターは法務手続ではなく現場規律として運用してください。

支払・留保金・履行保証

留保金は契約金額の5〜10%が一般的で、半分は竣工時、残りは瑕疵担保期間満了後に返還されます。返還が遅延した場合、契約または法定利率による利息を請求できます。瑕疵担保期間は12〜24か月が多く、法律上の担保責任とは別建てです。

履行保証は請求払型が主流です。銀行は書類のみを審査し実体的争点を判断しないため、発注者が請求した場合に取り得る手段は、裁判所への仮の差止申立てです。要件は明白な権利濫用または詐欺の疎明で、数日以内の対応が求められます。

紛争解決手続の選択

FIDIC契約では紛争裁定委員会(DAB/DAAB)が前置手続とされ、これを経ずに仲裁を申し立てると手続違背を主張される可能性があります。締結時には、この前置が削除・修正されていないか、また実際に委員会が設置されているかを確認してください。

タイ仲裁院(TAI)は建設紛争でよく用いられ、審理言語を英語とする合意も可能です。通常裁判所の訴訟は手続が明確な反面、期間が長く、技術鑑定の運用も仲裁ほど柔軟ではありません。政府案件では行政裁判所の管轄との線引きにも注意します。

よくあるご質問

発注者の支払遅延を理由に工事を止められますか。
契約次第です。多くの契約は、停止通知を出し所定期間を経過した後に限り中止できると定めます。手続を踏まない中止は逆に債務不履行となり、工期損害を反対請求される恐れがあります。
下請は発注者へ直接請求できますか。
原則できません。契約関係の相対性により、請求先は元請となります。例外は直接払いの合意がある場合や、発注者の直接指示がある場合です。下請契約の支払連動条項は逐語で確認してください。
瑕疵の請求期間はどのくらいですか。
請負の瑕疵責任は、原則として引渡しから1年以内に発見したものについて主張でき、建物など不動産工事は5年です。瑕疵を故意に隠した場合は起算が異なります。契約上の瑕疵担保期間と併せて判断します。

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