
最初に見る三つの文書:定款・株主間契約・最新登記
タイの非公開会社では、定款が取締役の署名方法(単独か共同か、社印の要否)、株主総会の決議要件、新株引受権を定めます。株主間契約でデッドロック解消条項やプットオプションを追加できますが、登記されない事項は第三者に対抗できず、定款の強行的な定めを覆すこともできません。
商務省(DBD)の最新登記証明が交渉の出発点です。現在の取締役、署名権限、払込資本、登記住所が分かります。紛争の第一幕が、通知のないまま登記取締役を変更されていた事案であることは珍しくありません。発見が早いほど取消しの可能性は高まります。
株主の権利:閲覧・招集・決議取消し
株主は株主名簿、株主総会議事録、年次財務諸表を閲覧できます。会社が拒む場合は裁判所に命令を求められます。実務では、まず配達証明付きの書面で正式に請求し受領記録を残すことが、その後のあらゆる主張の土台になります。口頭の請求は法廷では存在しないのと同じです。
一定割合を保有する株主は臨時株主総会の招集を請求でき、取締役が応じない場合は自ら招集できます。手続違反または定款・法令違反の決議は、法定期間内に取消しの訴えを提起できます。期間は決議の日から1か月程度と短く、徒過すると損害賠償構成に切り替えるほかありません。
取締役の責任:忠実義務と利益相反取引
取締役は会社の利益のために慎重に行動する義務を負い、会社の事業機会を自己に転用すること、開示なく利益相反取引を行うことは許されません。違反があれば会社は損害賠償を請求でき、会社が追及しない場合には要件のもとで株主が代わって提訴できます。文書偽造や資金の流用は刑事手続の対象にもなります。
鍵は証拠収集です。銀行取引明細、仕入先の相見積、関係会社の株主名簿、往復メールを、相手に察知される前に確保します。必要に応じて証拠保全や仮差押えを先行させ、その後に正式な追及を行います。順序を誤ると何も残りません。
デッドロックと出口:現実的な三つの選択肢
第一は合意による分離で、一方が他方の株式を買い取ります。評価は独立会計士の算定によるか、「一方が価格を提示し、他方が売るか買うかを選ぶ」方式を用います。第二は事業の分割で、顧客・地域・製品ラインで切り分けます。双方に実際の運営能力がある場合に適します。
第三は裁判による解散です。事業の継続が不可能または著しく困難な場合に申し立てられますが、時間がかかり価値の毀損も大きいため、通常は交渉材料として位置づけます。当所は三つの選択肢の所要期間と回収見込みを一枚の表で比較します。
よくあるご質問
- 49%の出資でも相手を牽制できますか。
- 可能です。特別決議事項の要件加重、取締役指名枠、重要事項の拒否権を定款に定め、株主間契約にデッドロック条項を置きます。ただし設立時または増資時に定款へ織り込む必要があり、後からの変更には相手の同意が要ります。
- 無断で登記取締役を変更されました。
- まず商務省で変更登記の申請書類を取得し、署名と議事録の真正を検証します。偽造であれば、登記の取消しを求める手続と刑事告訴を並行して進めます。時間に敏感な類型なので、発覚から数日以内の着手を勧めます。
- 名義株主(ノミニー)の利用は可能ですか。
- 外資規制を回避する目的のノミニーは外国人事業法に違反し、刑事責任のリスクがあり、当該持分の取決めも保護されません。優先株による議決権設計、BOI、条約上の地位など適法な代替策を、設立段階で選択してください。