
タイの法定夫婦財産制の基本
婚姻前から各自が所有していた財産、婚姻中に相続や贈与で取得した財産は原則として個人財産です。一方、婚姻中の収入や取得資産は原則として共有財産となり、離婚時は等分されます。個人財産から生じた果実が共有財産に組み入れられる点は、日本の感覚と異なるため注意が必要です。
共有財産の重要な処分には双方の同意が要ります。不動産の売却、抵当権の設定、第三者への担保提供などが典型です。同意なく行われた処分は、相手方が法定期間内に取消しを求めることができます。
定められること、定められないこと
各自の収入の帰属、特定資産を共有から除外する合意、婚姻後に購入する資産の出資割合と名義、事業用資産や持分の帰属、債務の負担区分などは有効に定められます。記述が具体的であるほど、離婚時の解釈の余地が減ります。
他方、公序良俗に反する条項、子の扶養を受ける権利を奪う条項、離婚時の養育費を全面的に放棄させる合意は認められません。子に関する事項は常に子の最善の利益を基準に裁判所が判断し、契約は参考資料にとどまります。
国際結婚の届出と書類の流れ
日本人配偶者は在タイ日本国大使館で婚姻要件具備証明書を取得し、タイ外務省領事局の認証とタイ語翻訳を経て、区役所で届出を行います。日本側への報告的届出も必要となるため、両国の手続を一本の工程表にまとめて管理します。
在留資格や査証の期限と届出日が競合しやすいので、書類の有効期間を逆算した日程設計が実務の要です。必要書類は国籍と居住地により異なるため、初回相談時に個別のチェックリストを作成します。
国際離婚・親権・不動産
協議離婚は区役所で可能ですが、双方の出頭と、財産・養育・面会交流についての合意が前提です。相手が応じない場合や国外にいる場合は裁判離婚となり、管轄と判決の承認を先に整理しないと、片方の国でのみ離婚が成立する状態になりかねません。
親権は共同または単独で行使でき、未成年の子を無断で国外へ連れ出す行為は重大な結果を招きます。不動産については、外国人配偶者が土地を共有名義で保有することはできず、登記時に購入資金がタイ人配偶者の個人財産である旨の申述を求められます。婚前契約はこの点と整合させておく必要があります。
よくあるご質問
- 既に婚姻していますが、今から婚前契約を結べますか。
- 法定財産制を排除する効力を持つ契約を後から結ぶことはできません。個別資産についての取り決めは可能ですが効力は限定的です。資金の出所を示す記録や、必要に応じた法人・信託の枠組みで手当てするのが現実的です。
- 日本で作成した婚前契約はタイで有効ですか。
- タイで婚姻届出を行う場合、法定財産制を排除するには原則として届出時の提出と記載が必要です。内容が矛盾しないタイ語版を用意し、同日に登記しておくことをお勧めします。
- 婚姻前の預金で買った住宅は離婚時に分割対象ですか。
- 資金が婚前の個人財産であり、共有財産と混同していないことを立証できるかが分かれ目です。通帳の連続性が鍵で、共同口座を経由したり婚姻後の収入と混ざったりした場合は共有財産と推定されるのが通常です。