
商標登録を先に済ませてから交渉に入る
タイは先願主義です。商談中に相手方が自社名義で出願してしまい、本格進出の段階で買い戻しを求められる事例が毎年発生しています。候補先と接触する前に、飲食サービス・小売サービス・商品の各区分をまとめて出願しておくのが最も安上がりな防御です。
ライセンスは契約書で独立して定め、必要に応じて登録します。模倣品を税関や警察に取り締まってもらう局面では、登録権利者が誰か、ライセンスが有効かを現場で即座に示せるかどうかで対応速度が変わります。メール一本の許諾では説明に時間がかかります。
独占権には必ず数値目標を紐づける
「タイ全土の独占」とだけ書くと、動けない相手に市場全体を止められます。年度ごとの最低出店数と最低仕入額を定め、未達の場合は独占が非独占に自動転換する、あるいは対象地域が既存店の県に自動縮小する、という段階的な仕組みが実務的です。
供給条件も同様です。卸価格の改定手続、為替変動の負担割合、欠品時の代替措置、第三者からの同等原料調達の可否を明記します。空白のまま運用すると、後で「口頭で了承を得た」という主張が必ず出てきます。
解除条項と解除後の原状回復
重大事由による即時解除と、予告期間を置く任意解除を分けて規定します。即時解除の事由には、無許諾のレシピ変更、支払遅延の日数超過、非承認原料の使用、類似商標の出願などを列挙しておきます。
解除後の義務は細かいほど実効性があります。看板・サイン類の撤去期限、販促物の返還、SNSアカウントとデリバリー各社の店舗名変更、包材在庫の廃棄と写真による報告、違反時の日額違約金まで定めます。ここを省くと、営業を続けられたまま訴訟に入ることになります。
外資規制と税務ストラクチャー
ロイヤルティを受け取るだけであれば現地法人は不要なことが多い一方、自社で仕入・配送・加盟店からの代金回収まで行うと外国人事業法上のサービス・小売規制に触れます。合弁、外国人事業ライセンス、あるいはタイ側法人にその機能を担わせる、のいずれかを事前に選択します。
ロイヤルティ送金には源泉税がかかり、日タイ租税条約の軽減税率を使うには居住者証明などの事前準備が必要です。商流と税務を同時に設計しておかないと、契約締結後に手取り額が想定を下回ることになります。
よくあるご質問
- 加盟店が無断で別県に出店しました。閉店させられますか。
- 許諾地域が県単位で特定され、書面同意なき拡大を禁じていれば、停止請求と違約金請求が可能です。「タイ国内」とだけ記載されている場合は主張が難しく、条件を付け直す再交渉での解決が現実的です。
- 相手に商標を先に登録されました。取り戻せますか。
- 悪意の出願を理由とする異議・取消の申立てが可能です。証拠は商談メール、見積書、チャット履歴、他国での先行登録などです。時間はかかるため、候補先との接触前の出願を常にお勧めしています。
- 売上歩合のロイヤルティで、売上を過少申告されないか心配です。
- 監査権を条項化します。事前通知のうえ会計士を派遣してPOSデータと帳簿を確認でき、一定割合を超える過少申告が判明した場合は監査費用を相手方負担とする、という設計です。指定POSの利用や毎月の税務申告書控えの提出も併せて求めます。