
荷揚げ直後に必ず行う四つの実務
第一に、異常を認めたら運送人と港湾側へ書面で損害通知を出すこと。電話だけでは記録になりません。第二に、独立した検数・鑑定会社を手配し、運送人側の立会いと署名を得た共同検査を実施すること。
第三に、シール番号、コンテナ番号、庫内の積付状態、損傷箇所を連続写真で記録すること。第四に、船荷証券原本、パッキングリスト、インボイス、温度記録、機器受渡票などの原資料を一括保管することです。どれか一つ欠けるだけで、損傷の発生区間について反論を受けます。
誰を相手にするか——運送人・フォワーダー・実際運送人
船荷証券の発行者が実際に運航する船社とは限りません。フォワーダーが自社名義で証券を発行していれば契約運送人として全責任を負う可能性があり、単なるブッキング手配であれば責任範囲は大きく狭まります。請求先の特定が先で、通知文の送付は後です。
タイの海上物品運送法には責任限度額があり、荷送時に価額を申告して証券に記載していない限り、実損より大幅に低い額しか回収できません。高額貨物は出荷前の運送条件の段階で手当てすべき論点です。
船舶差押えと担保の取得
船主側の責任が明白でも支払を引き延ばされる場合、船舶がタイの港に在泊している間に裁判所へ差押えを申し立て、保証状の差入れを引き出す方法があります。極めて短時間で申立書類と反対担保を用意する必要があるため、入港前からの準備が前提です。
実務上は、P&Iクラブの保証状が出た時点で交渉解決に移行する案件が多数です。当事務所は訴訟と和解の二本立てで準備し、保証額・弁護士費用・所要期間を一覧にして本社判断に供します。
デマレージ、ディテンションと保険代位
港湾混雑や通関遅延によるコンテナ留置料は、荷主が気づかないうちに高額化します。起算日、フリータイム日数、遅延が運送人側の事由によるものかを確認すれば、抗弁や反対請求の余地が生まれます。
貨物保険が付いている場合は、保険者が先に填補し運送人へ代位求償するのが通常です。注意点は、保険金受領前に運送人の責任を免除する書面へ署名しないこと。代位権を害したとして填補を拒絶されることがあります。
よくあるご質問
- 貨物クレームの出訴期間はどれくらいですか。
- 海上運送では引渡し又は引渡されるべき日から一年程度と短く、書面通知の期限が数日という場合もあります。発見当日に通知を出し、適用される起算点を早期に確定させることが実務上の分かれ目です。
- 船荷証券に外国裁判所の管轄条項があります。タイで争えますか。
- 事案によります。引渡地と損害発生地がタイで、被告がタイに資産を有する場合には、タイでの主張の余地があります。船舶差押えの手続が担保取得や管轄確保の入口となることもあります。
- フォワーダーが「責任は船社にある」と支払を拒みます。
- 証券の発行名義、運賃差益の取得、納期保証の有無を確認します。契約運送人と評価できる場合、荷主はフォワーダーへ直接請求でき、実際運送人との責任分担はフォワーダー側の問題として切り離せます。