
協議離婚登録と裁判離婚の分かれ目
協議離婚は夫婦双方が郡役場(アンプー)に出頭し、証人2名を要します。前提として婚姻がタイで登録されていること。日本のみで婚姻届を出している場合は、双方合意でも裁判手続になるのが通常です。財産分与・親権・養育費を同時に登録できます。
裁判離婚には法定事由が必要です。不貞かつ公然の同居、重大な侮辱・傷害、1年以上の遺棄、3年以上の別居、3年以上の婚姻義務不履行、実刑判決など。「性格の不一致」という包括的事由は存在しません。第一審は通常6〜12か月で、まず調停が行われます。
財産分与:固有財産と夫婦共有財産の切り分け
婚姻前の財産、婚姻中の贈与・相続で得た財産は固有財産です。それ以外の婚姻中に取得した財産は共有財産で、離婚時は原則折半します。名義は決定的ではなく、取得時期と資金の出所が判断材料になるため、登記簿より送金記録が効くことが多くあります。
外国人が関わる不動産はもう一段の検討が要ります。土地は外国人名義にできないため、タイ人配偶者名義とし購入時に資金出所の申告書を提出している例が典型です。離婚時に主張できるかは、その時点の書面の内容次第です。送金記録しかない場合でも、金銭的な清算を求める道は残ります。
子:親権・面会交流・養育費の実効性
判断基準は子の最善の利益のみです。低年齢の子は主たる監護者に親権が認められる傾向がありますが、居住の安定性、経済力、面会交流への協力姿勢も考慮されます。共同で行使する定めも、一方が行使し他方の面会条件を明記する定めも可能です。
養育費は必要性と負担能力で定まり、事情変更による増減額の申立てもできます。将来の執行を考えるなら、金額・支払日・口座・遅延時の効果まで書き切ってください。「別途協議する」という一文は、条項全体を執行不能にします。
国際的な論点:外国判決・婚前契約・子の連れ出し
日本の離婚判決や協議離婚はタイで自動的に効力を生じません。タイ側の身分登録を変更するには別途手続が必要です。逆にタイでの離婚を日本の戸籍に反映させる手続も要ります。両方を終えないと、一方の国では既婚のままという状態になります。
婚前契約はタイでも有効ですが、婚姻登録と同時に登録しなければ無効です。後から作成しても効力はありません。また、他方の同意や裁判所の許可なく子をタイから連れ出すと違法な連れ去りとなり得ます。タイはハーグ条約の締約国です。
よくあるご質問
- 日本で婚姻届を出しました。タイで離婚できますか。
- 一方がタイに住所を有するなど管轄の連結点があれば家庭裁判所で可能です。ただし郡役場での協議離婚登録は使えないのが通常で、裁判手続になります。判決後、日本側の届出も別途必要です。
- 配偶者名義の不動産は一切請求できませんか。
- そうとは限りません。購入時期、資金の出所、購入時に提出した書面が判断を分けます。婚姻中の共有資金で取得したと立証できれば、価値の清算を求められます。土地そのものを取得できなくても金銭賠償は可能です。
- 養育費が止まりました。どうすればよいですか。
- 判決または裁判所が確認した合意があれば、給与や預金の差押えを含む強制執行を申し立てられます。相手が国外にいる場合は、その国での承認・執行が必要になるため、条項は最初から国際執行を想定して作成します。