
自社の業務類型を先に確定させる
顧客資産を預かって売買を成立させれば交換業、顧客の注文を取り次ぐだけなら仲介業、自己勘定で気配を提示すればディーラーです。実際のサービスは複数類型にまたがることが多く、免許の範囲を狭く申請するとローンチ直後に無免許営業となります。
タイ居住者への勧誘自体が業として扱われます。サーバーを国外に置き英語サイトで受け入れる形でも規制を免れることはできません。免許を取るか、言語・決済手段・広告配信まで含めて地域を実質的に遮断するか、どちらかを選ぶ必要があります。
申請書類で最も重い三点
一点目は顧客資産の保全方針です。口座とウォレットの双方で自己資産と分離する方法、コールド比率、秘密鍵の分割とマルチシグ、単独の担当者が資産を移動できない統制を具体的に記述します。
二点目はAML・本人確認体制で、口座開設時の確認、高リスク顧客の強化審査、オンチェーンのアドレススクリーニング、疑わしい取引の届出フロー、記録保存年限までを網羅します。三点目は情報セキュリティと事業継続で、脆弱性診断計画、インシデント対応、復旧訓練を含みます。
人員・資本金・ガバナンス
類型ごとに最低払込資本と純資産維持要件があり、タイ常駐のコンプライアンス責任者、リスク管理責任者、IT責任者の配置が求められます。兼任が多すぎる体制や名義だけの就任は、面談で見抜かれます。
取締役と主要株主には適格性審査があり、関連犯罪歴や他法域での処分の有無が確認されます。海外株主は認証済みの会社資料と最終受益者までの資本関係説明が必要で、この収集に規程作成以上の時間がかかることも珍しくありません。
免許取得後に続く義務
取得後は財務・業務データの定期報告、顧客資産の日次照合、広告表現の事前チェック、システム重要変更の事前届出が継続します。違反時は警告・課徴金・業務停止があり、処分内容は公表されます。
税務面では、デジタル資産取引の所得課税・源泉徴収の扱いが伝統的な証券と異なり、顧客への税務情報提供も論点になります。当事務所は会計チームと連携し、規程と申告実務の口径をそろえて設計します。
よくあるご質問
- 申請から取得までどれくらいかかりますか。
- 書類準備に三〜六か月、受理後の審査と実地確認に六〜十二か月、合計で一年前後が目安です。所要期間は待ち行列ではなく、内部統制文書の完成度と実システムを説明どおり提示できるかで決まります。
- 海外で免許を持っていれば、タイの顧客に提供できますか。
- できません。海外免許はタイでは効力を持たず、居住者への勧誘・提供には現地免許が必要です。現地法人で申請するか、既存の免許業者と提携し役務提供者を明確に分ける方法が現実的です。
- 助言や情報提供のみでも免許は必要ですか。
- 対価を得てデジタル資産の投資助言を行う場合は助言業の免許が必要です。一般的な市場情報や教育コンテンツは通常対象外ですが、具体的な売買推奨と有償性の有無が分かれ目になるため、公開前の該当性評価をお勧めします。