
典型的な四類型と税率の考え方
一般の役務提供料は、国外法人がタイに恒久的施設を持たず役務が国外で提供される場合、国内法と条約で扱いが異なり、個別の判断が必要です。使用料は、商標、ソフトウェア、ノウハウ、著作権の使用許諾が対象で、税率は高めに設定され、条約による軽減幅も限定的です。
利子と配当は、受領者の属性と条約条項で税率が決まり、配当では受益者の認定も問題になります。技術役務料を独立の条項として置く条約もあり、使用料との線引きが争点になりがちです。技術の移転や使用許諾を伴うかどうかが鍵になります。
条約の適用は自動ではなく、三つの書類が要ります
条約の軽減を受けるには通常、有効期間内の居住者証明、支払の性質を裏付ける契約書、そして受益者であることの説明が必要です。三つが相互に整合している必要があり、契約の名目と実際の提供内容が食い違う場合、歳入局は実質で区分し直して計算します。
居住者証明の取得には数週間かかることが多く、支払前に着手すべきです。間に合わない場合は国内法の税率で徴収し、後日還付を申請する流れになりますが、還付手続は時間がかかり資料も多く必要です。事前準備のコストのほうがはるかに安く済みます。
付加価値税を忘れないこと:PP36は源泉徴収とは別物です
国外から提供された役務をタイで利用する場合、支払者はリバースチャージ方式で付加価値税を自己申告(PP36)します。源泉徴収とは独立した義務です。実務で最も多い漏れが、源泉徴収だけを行いPP36を失念するケースです。
この自己申告した付加価値税は、要件を満たせば仕入税額として控除できますが、所定期間内に正しく申告していることが前提です。ソフトウェアのサブスクリプション、クラウドサービス、海外プラットフォームの手数料が、特に漏れやすい類型です。
恒久的施設と移転価格の連動リスク
国外の関連会社が人員を長期にタイへ派遣して役務を提供すると、役務PEを構成する可能性があります。そうなると源泉徴収にとどまらず、その部分の利益についてタイで法人税申告が必要になります。滞在日数とプロジェクト期間は契約の段階で設計してください。
グループ役務料は移転価格の検証も受けます。役務が実際に提供されたか、受益者にとって価値があるか、配賦基準は合理的かが問われます。源泉徴収、付加価値税、移転価格の三つは同時に調査されることが多く、資料は一度に揃えておくべきです。
よくあるご質問
- 国外の取引先から「手取り額」での送金を求められました。
- 合意は可能ですが源泉税の納付義務は残り、税額を含めた金額に割り戻して計算(グロスアップ)するため実際の負担は額面より重くなります。誰が税を負担するかで後日争わないよう、契約に明記してください。
- 海外ソフトウェアのライセンス購入は使用料に当たりますか。
- 許諾の内容によります。エンドユーザーが使用権のみを得る汎用ソフトと、複製・改変・再許諾の権利を得る場合とで区分が変わり得ます。契約条項と提供形態が判断材料になるため、購入前に確認してください。
- 国内法の税率で徴収済みですが、条約還付は可能ですか。
- 可能ですが法定期間内の申請が必要で、居住者証明、契約書、送金証憑を提出します。手続には時間を要するため、以降の支払は条約税率を事前適用する運用へ切り替え、資金の固定化を避けることを勧めます。