
再生手続の要件・申立権者・自動停止
申立ては債務者自身のほか、単独または合計1,000万バーツ以上の債権を有する債権者、一部の監督官庁も行えます。裁判所が審査するのは支払能力の有無そのものではなく、再建の可能性と相当な理由です。受理決定により自動停止が直ちに生じ、訴訟と執行が止まります。この期間が交渉の窓です。
裁判所はプランナーを選任し、法定期間内に再生計画を提出させます。計画は債権者の組ごとの決議と裁判所の認可を要します。可決要件は各組の頭数の過半数かつ債権額の4分の3以上など二重の基準であるため、提出前の債権者の組分け設計が可決率を実質的に左右します。
債権者側:届出期限は動かせません
破産・再生いずれでも、債権者は法定期間内に執行官へ債権を届け出る必要があり、徒過すると原則として配当を受けられません。契約書、請求書、残高確認、納品証憑を添え、元本と利息を逐一検証できる形にします。国外債権者は認証済みの委任書類とタイ語訳が必要で、通常4〜6週間の準備を見込みます。
担保権者には選択肢があります。担保を放棄して配当手続に参加するか、担保物からの優先弁済を主張し不足額を一般債権として届け出るかです。担保物の評価額が低い場合、担保にこだわるほど回収額が下がることがあります。
破産清算と否認権
破産宣告により債務者は財産の管理処分権を失い、執行官が換価・配当します。順位は手続費用、従業員の賃金など優先債権、担保権者の担保物からの優先弁済、残余を一般債権へ按分。株主は最後で、実務上残余はほぼありません。
破産前の一定期間内の偏頗弁済や廉価譲渡は否認の対象となり、管財側が裁判所に取消しと回収を求められます。窮境下で「付き合いの長い取引先にだけ先に払う」対応は効果がないばかりか、取締役の責任問題にも発展します。
取締役と親会社のリスク管理
支払不能が現実味を帯びた局面では、取締役に慎重な行動が求められます。弁済不能を認識しながら借入れを重ねる、資金を引き出す、債権者を害する処分を行うといった行為は民事責任を生じ、虚偽の説明を伴えば刑事リスクもあります。グループ間資金移動は商業的合理性の記録が不可欠です。
親会社側で問題になりやすいのがコンフォートレターとグループ保証です。曖昧な文言のレターが常に保証となるわけではありませんが、債務引受と評価されれば親会社もタイの手続に巻き込まれます。窮境期に発行する文書は、署名前に効力評価を行ってください。
よくあるご質問
- 一部の債務はまだ支払えます。それでも再生を申し立てられますか。
- 申立ては可能です。要件は再建可能性と相当な理由であり、完全な支払不能である必要はありません。むしろ資金が残っている段階での申立てのほうが、計画の可決も遂行も成功しやすくなります。
- 再生手続中、取引先は出荷を止められますか。
- 自動停止が止めるのは訴訟と強制執行であり、将来の取引の継続を強制するものではありません。手続開始と同時に主要サプライヤーとの継続交渉が必要で、現金決済や支払サイト短縮と引き換えに供給を確保するのが実務です。
- 日本の親会社の債権も届け出できますか。
- できます。国内債権者と同等に扱われますが、公証・認証済みの債権証憑とタイ語訳が必要です。株主貸付に該当する場合、組分けや優先順位で別異に扱われることがあるため、事前評価を勧めます。